平成21年度大学と附属学校園の共同研究・合同報告会
(平成22年3月26日)

■ 目的
 本学において、大学と附属学校園の共同研究が様々なかたちで進んでいます。それぞれの研究については進展していますが、いまだ個別の講座等と教科等との取り組みにとどまっているのが現状です。
 平成21年3月に出された「国立大学附属学校の新たな活用方策等について」では、大学と附属学校園との連携について、次のように謳われています。  大学と附属学校園の共同研究を、これまで以上に組織的・システム的に行うことが要請されているといえます。こうした要請に応えるためには、まず、共同研究に関する情報交換を密に行える体制を作る必要があります。
 報告会では、共同研究の担当者がそれぞれの成果と課題を報告しあうことを通して、今後、本学で組織的・システム的な共同研究を実施していくための基礎をつくることを目的としました。
■ 概要

平成22年3月26日 本学大会議室

開会の挨拶(生田周二・附属学校部長)
司会者:赤沢早人(附属教育実践総合センター)

第T部 研究発表

◇研究発表1 資料はここをクリック
「特別な配慮を必要とする幼児の教育的配慮」
竹内範子(附属幼稚園)越野和之(学校教育講座)

 附属幼稚園においても、自律する力の育ちや行動調整やコミュニケーションに課題を持つ子どもたちへの支援のプロセスを明確化し、園内体制を構築することが求められてきた。附属幼稚園において「一人ひとりが輝く保育をめざして」というテーマに基づいた研究と実践の蓄積をもとに、大学とも連携して特別な配慮を必要な幼児への教育支援の具体的な仕組みと内容を検討した成果を報告した。

◇研究発表2 資料はここをクリック
「家庭科教育における大学と附属小学校の連携」
鈴木洋子(生活科学教育講座)谷口明子(附属小学校)

 20年弱に及ぶ附属小学校の家庭科の授業研究の中で調理実習などの改善の共同研究をもとに、今日における食育の課題にアプローチしてきたことを報告したものである。家庭科の食領域での指導を中心として、学習指導要領における小学校家庭科の方向性を探ってきた。それが今日、明日に役立つ食育レシピなどの教材へ結実していることを示した。

◇研究発表3 資料はここをクリック
「奈良からロボット教育の風を−地域に根ざしたロボット教育の推進−」
 谷口義昭(学校教育講座)福田哲也(附属中学校)

 子どもたちのものづくりや考える力の育成が叫ばれているなか、教員をめざす大学生とロボット技術に堪能な中学生が共同で、地域の小学生を対象にロボットセミナーを開催した実践を報告した。セミナーを通して、単にものづくり力の向上だけでなく、創造力の育成にも大きく貢献できた。大学生、中学生、小学生がつくるロボット教育のコミュニティが奈良で「ロボットセミナー」 「ロボット教育」 「ものづくり」 「考える力の育成」 「大・中・小学生の連携」として成果をあげている。

◇研究発表4 資料はここをクリック
「幼稚園3年間の幼児の絵本体験 −家庭と園で出会う絵本−」
横山真貴子(学校教育講座)(附属幼稚園教諭よりコメント)

 子どもと絵本の関わりを中心的テーマとして、附属幼稚園への定期的な観察、先生方へのインタビュー、保護者へのアンケートなどを積み重ねてきた研究の中で、明らかにしてきた成果を報告したものである。保育の場は、絵本との出会いをつくる場であり、絵本との出会いを広げることにつながり、そして絵本との出会いをつながることにあるといえる。特に、保育者に支えられた「ともだち」の存在は、絵本と子どもの関係が始まったり、それが発展していくのに重要な役割を持っていることが示された。

◆外部評価者によるコメント

 外部評価者として、奈良県教育委員会事務局からは廣瀬保善氏(学校教育課・課長補佐)、奈良市教育委員会からは石原伸浩氏(学校教育課・指導係長)のお二人にお願いし、貴重なコメントをいただきました。

 廣瀬先生からは、附属のよさを生かした研究報告であり、継続的先導的実験的なものとして評価していただきました。中長期的にできる共同研究であり、貴重なものであること、今回の共同研究発表は、「幼稚園における特別支援教育、食育、ものづくり、読み聞かせ」・読書活動などをテーマとした今日的な課題に応えるものであること、そして、それらが附属学校の活性化、特色づくり、教員の資質向上など様々な成果をもたらし、それが子ども達のよりよい教育につながっていることを指摘されました。
 附属学校だからできることもあり、公立学校にも普及しやすいものと同時に適用しにくいものもあることも事実であり、その意味でも成果の蓄積を大切にしてほしいと要望され、成果の普及・発信として、県立教育研究所や特別支援教育企画室などにも今回の報告を持ち帰りたいと述べられました。

 石原先生からは、奈良市教育委員会と大学とは研究者との個人的な連携と同時に組織的な連携を同時に行っていることの紹介がありました。そして、今回の附属学校園と大学との共同研究発表会では、組織としての大学と附属の連携した共同研究がすすめられていること、同時に附属学校の活用が進んでいることが示されたと評価されました。それぞれの発表において、幼稚園での支援システムの整理や感覚統合の観点の導入、小学校の家庭科の授業研究での歴史的な蓄積、さらに大学との共同研究の蓄積、明日に役立つ食育レシピの開発、中学校のロボット教育では、50人を越えるクラブとして成長、夢があるものづくりの姿を評価していただきました。さらに、絵本体験では、幼児期の読書経験の重要性と共に幼小連携の課題もご指摘いただきました。

 共通して、こうした大学と附属学校園の共同研究が公立校の教育実践や実践研究の開発へつながっていくことへの期待が語られました。

第U部 全体協議「大学と附属学校園との連携の成果と課題について」

 大学教員と附属学校教員との間で連携のこれまでの経過を振り返り、その成果と課題を共に議論しあいました。今後も、このような共同研究、教育実習、公開研究会などでの連携を深めあいつつ、成果をあげ、地域にも貢献していくことが望まれます。

■ 問合せ先

奈良教育大学 総務課 附属学校事務係
E-mail:soumuka
電話&FAX:0742−27−9281


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